~理論で終わらせない 実務で使うMBSE~

MBSE入門

中級者向け

バリアント管理手法であるプロダクトライン開発

昨今、多様なニーズへの対応により製品の複雑化が進んでいます。これは、業務の過度な細分化を助長し、全体像の把握を困難にし、品質の低下かつ管理コストの増加を招いています。一方で、競争力向上のために、開発リードタイムの短縮が求められているのも事実です。そのような状況の中で多くのお客様は、各開発資産(要求、アーキテクチャ、テスト仕様など)において共通点、相違点を管理するバリアント管理に取り組んでいます。しかし、一貫性をもって効率的に資産を管理することに大変苦労されています。

このような「効率的なバリアント管理」の課題解決に有用な手法が、プロダクトライン開発(Product Line Engineering 以下 PLE)です。

PLEでは、最初に、製品系列の特徴を体系的にまとめてフィーチャモデルを作成します。フィーチャモデルとは、製品系列内での共通点、相違点をツリー状に管理した抽象的なモデルで、ツリーの構成要素である各フィーチャは製品の特性を表しています。次に、作成したフィーチャモデルと各開発資産(要求、アーキテクチャ、テスト仕様など)を紐づけて一元管理します。新規製品の開発時には、その既存資産をベースに新規製品を導出します。規格としても、ISO/IEC 26550で定められています。

PLEのメリットを、品質、コスト、開発期間に分けて説明します。

まず、品質のメリットとして挙げられるのは、過去の信頼できる開発資産(市場で実績のある資産)を流用してシステムを構築することにより、対象システムの品質を担保できることです。

次に、コストの観点として、共通資産を使用することで開発コスト、製造コストを削減することが可能です。また開発資産を一元管理することで、管理コストの削減も可能になります。

最後に、開発期間の観点です。PLE管理ツールを用いることで、SysMLモデルやSimulinkモデルなどツールを跨いだ資産の整合性を確保することができ、仕様不整合による手戻りを防止することが可能です。また、フィーチャモデル上で該当する仕様を選択し、対応する資産(要求、アーキテクチャ、テスト仕様、テスト結果など)をそれぞれ自動で抽出することで、各個別開発を効率的に進めることも可能になります。

サイバネットMBSE(株)におけるPLEの提案

さて、ここからは弊社とPLEとの関わりを説明したいと思います。

 弊社は主に、MBSEコンサルティング会社として、多くのお客様へMBSEの導入をサポートしてきました。その中で、多くのお客様から、SysMLモデルに対してもバリアント管理をしていきたいというご要望をいただいております。そのようなお客様には、PLEの考え方を取り入れたMBSEの活用をご提案させていただいております。

 MBSEでPLEの考え方を適応するにあたり、単にSysMLモデルを構築するのではなく、組織構造、業務プロセスを考えることが重要になります。組織構造では、フィーチャモデルの更新や、各共通資産を責任をもって管理する担当者を用意する必要がありますし、業務プロセスでは、フィーチャモデルを活用したプロセスに改変する必要があります。弊社は、お客様のひとつひとつの課題を丁寧にお伺いし、それぞれのお客様にあった形で、MBSEでPLEを実現できるように、導入案・改善案をご提案させていただいております。

また弊社は、2022年9月より、独pure-systems社(以下 pure-systems)と、日本で最初のコンサルティングパートナーとして業務提携を開始いたしました。pure-systems 社製 pure::variantsは、代表的なSysMLツール(CAMEO Systems Modeler / Magic Cyber Systems Engineer、 Rational Rhapsody、 Enterprise Architecture)を含む20以上のエンジニアリングツールと連携し、要求、システムモデル、テスト計画など、製品ライフサイクル全体を通じて、資産を管理することが可能です。この業務提供により、弊社からお客様へ、より充実したサポートをご提供できるようになりました。

今後、コンサルティングサービス、並びにツールに関してご要望あれば、ご連絡をお待ちしております。(五十嵐)