初心者~中級者向け
MBSEをユーザ視点で支えるツールとは?
近年、様々な業界の方がMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)に取り組んではみたものの、その中で扱うSysMLのモデルを作るための技術理解や、SysMLモデリングツールの操作方法の習得の難易度が高すぎるといった声をよく耳にします。弊社の別の記事にもありました通り、MBSEを体系化するための指標を3本柱という形でご説明しましたが、本記事ではその3本柱のうちの1つである、モデリングツールという視点でお伝えしたいと思います。
難易度が高すぎるとは、どのような点を指すのか?
1つ目には、SysMLのモデルを作成するためには、少なくともSysMLの文法や用途を理解しなければならない点が挙げられます。聞きなれない言葉が無数に存在し、それぞれに意味や用途が定義されている中では、理解するのに非常に多くの時間を要します。例えば、要求や機能を定義する際の根拠や導出元を示すために、SysMLのモデルでは線で繋いで表現しますが、その線(Relation情報と呼びます)は点線や破線、直線のように種類と意味合いが多岐に渡ります。
2つ目には、SysMLのモデルを作成するためのモデリングツールの操作方法を習得しなければならない点が挙げられます。前述の通り、SysMLには無数に存在する言葉や用途が定義されている中では作成するモデルも多岐に渡るので、使いなれていないツールではMBSEの効果が出る前に挫折してしまう可能性があります。
では上記に挙げた点を解消するために、「MapleMBSE」という自社ツールを有しております。以降では、その内容について触れたいと思います。
MapleMBSEとは?
SysMLのモデルの要素として、例えば要求や振る舞い、構造や制約などの情報がありますが、MapleMBSEは、これらをExcel上で直感的に作成、編集できるツールです。Excelのシート上で、これらの要素を操作する画面を提供しており、例えば特定のタスクや領域におけるFMEA(Failure Mode and Effects Analysis)やDA(Decision Analysis)、RVTM(Requirements Verification Traceability Matrix)などの画面を最適化して提供できるものです。
使い方のイメージ
Excelのシート上にSysMLのモデルを編集する範囲を指定し、要求や機能などを入力する行・列の項目を定義することで、MapleMBSEが使用できるようになります。セル内に入力した情報は、自動的にSysMLの要素(例えば要求=Requirement、機能=Activityなど)に変換されるため、モデル作成者の視点で見ると、SysMLの文法や用途を意識することなく、モデルを作成することが可能になります。
ここで説明しなければならないのは、作成したSysMLのモデルがどのような形で保存されるかという点ですが、現在のMapleMBSEはダッソー・システムズ社(Dassault Systems)のTWC製品(Teamwork Cloud)やMCS製品(Magic Collaboration Studio)、IBM社のRational Rhapsody製品と相互に接続できる機能を有しております。そのため、保存方法や保存先は接続する製品によって異なる形式になります(ダッソー・システムズ社製品と接続する場合はダッソー・システムズ製品自体がクラウド製品であるため、SysMLのモデルはクラウド環境、あるいはサーバー側に保存されます)。
導入による効果
これまでの内容で、SysMLのモデルを作成する上での難易度が少しでも解消されるのではと感じて頂けましたら幸いですが、視点を変えてMapleMBSEを導入することを考えると、以下のようなことも実現できるのではないかと考えております。
・設計者側からの要望
- 業務の中で活用、定着させたい
- 効率良くMBDやMBSEに繋げたい
- 普段利用しているツールを使いたい(新たなツール導入は非効率になる)
・システム部門からの要望
- 設計者には情報システムを活用して欲しい
- ツールが多岐に渡ると管理が困難
- 柔軟な統合システム(ALMやPLM)を実現したい
Excel上で動作するツールは、モデル作成者や設計者側からだけでなくIT資産を管理するシステム部門の目線からでもメリットがあると思います。また、MapleMBSEのバックグラウンドで利用しているアーキテクチャやExcelライクな点は、利用されるお客様のニーズに柔軟なカスタマイズの提供を可能にしています。
最後に
現在、年1~2回程度の頻度でMapleMBSEをリリースしております。機能改善や、お客様のニーズを盛り込む内容が中心となっていますが、自動車業界や航空宇宙などの各業界におけるMBSEの活用度や先進度を鑑みて、新たなツールとの連携も計画中です。
本記事内での不明点や問い合わせなどの要望ありましたら、以下のリンク先よりご連絡ください。無償でのトライアルも可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。